「通常運転」とは何？

ある芸術大学関連施設で、一般向けの有料の講座が開かれたところ、ある受講生が、講義の内容に精神的なショックを受け、大学側に慰謝料を求めて提訴した。

その講義は、ヌードを通して、芸術作品の見方を身につけるというのが趣旨らしい。

ところが、講義の内容には、その受講生にとっては全く思いもよらなかったような性的表現の作品や講師自身の自慰行為の写真が含まれていたという。

講師は著名な男性美術家であり、訴え出たのは女性の美術モデルである。

だが、訴え出たのは、一人の受講生としてである。講義に使われた画像に問題があると感じ、それに対する大学側の対応があまりに酷かったからであるようだ。「有名人を守り」、悲しいかな、その大学の卒業生でもある彼女を強く排除しようとする姿勢が見えたのだ。

講師は、講義内容を自分にとっては「通常運転」だったとツイートしているが、思うに、この講義の目的は、何だったのだろう。

著名な現代美術家のユニークな芸術観を受講生に開陳するためではなかったはずだ。

にもかかわらず、その美術家は「通常運転」をした。そして、それは、この受講生にとっては、精神を傷つけるほどのものだったと主張しているのだ。

自分自身にとっては、いつもの「通常運転」だったというのは、弁解であってはならない。そこに、「自分のような芸術家なら許される、支持されて当然だ」というような裏側の声が聞こえなければ幸いである。